赤ちゃんが舌を出すのはなぜ?気になる病気や癖が与える影響を解説
赤ちゃんが舌を出すのが気になりますか?本記事では赤ちゃんが舌を出す理由や考えられる病気について解説。舌を出す癖が与える影響やなおすための方法についても紹介しますので、赤ちゃんの舌癖に悩んでいる方は必見です。

古川雄亮
大阪心斎橋矯正歯科 院長。歯学博士。東北大学歯学部卒業。九州大学大学院歯学府博士課程(歯科矯正学専攻)修了。日本矯正歯科学会所属。歯医者お悩み.com管理人。直近の研究実績「カンボジアのHIV感染感児におけるCD4細胞数と口腔内衛生管理の関連性について(2019, Scientific Reports)」。代表記事「ボリビアにおける歯科医療の実態とは?」。
「赤ちゃんが舌を出すのは何かの病気?」
「うちの子はよくベロを出すので気になっている」
こう考えている方のために、この記事では赤ちゃんが舌を出す理由を月齢別に紹介。考えられる病気や舌を前に出す癖が与える影響、癖をなおすための方法も紹介します。
赤ちゃんの口まわりの癖が気になる方は必見です。
本記事は以下の記事を参考にしました。
▷ What to know about sticking the tongue out
- 【月齢別】赤ちゃんが舌を出す理由
- 【生後0〜3か月】口まわりの筋肉が未発達なため
- 【生後3〜6か月】舌で遊ぶため
- 【生後6〜9か月】乳歯の生え始めでむず痒いため
- 赤ちゃんが舌を出すのは何かのサイン?
- ジェスチャー表現
- お腹が空いている
- ゲップがうまく出せない
- 単なる癖
- 赤ちゃんが舌を出すのは何かの病気?
- 口呼吸
- 鼻詰まり
- 口の中に傷ができている
- クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
- 舌が大きい(舌肥大症)
- 下あごが小さい(小下顎症)
- 赤ちゃんの舌の癖が与える影響
- 歯並び・噛み合わせ
- 歯ぎしり・食いしばり
- 発音・滑舌
- 飲み込み
- 赤ちゃんの舌癖をやめさせる方法
- 筋機能療法(MFT)
- 舌を前に出す癖を止めさせる
- 舌癖除去装置
- 喉の扁桃腺の切除
- 外科手術
- 口周りの癖が気になる場合は早めに相談を

赤ちゃんが舌を出す理由は、月齢によっても異なります。
【生後0〜3か月】口まわりの筋肉が未発達なため
生まれてすぐの赤ちゃんは口まわりの筋肉が未発達です。まだうまく舌を動かすことができず、口をしっかり閉じるのも難しいです。
そのため口が自然と空き、舌が出てしまうことも多いです。徐々に口まわりの筋肉が発達していくうちに、舌を口の中にしまえるようになってきます。
【生後3〜6か月】舌で遊ぶため
赤ちゃんは成長とともに自分自身の身体の各部位に興味を示すようになります。舌もそのうちの一つで、舌に興味を持ち始めると、口の外に出したり中に出したりして遊ぶようになります。
舌がよく出ているのも、このような遊びのうちの一つであることもあります。
また、赤ちゃんは舌を触覚の一つとして使います。手に触れたおもちゃを口の近くに持っていき、舌を出して感触を確かめることもあります。
【生後6〜9か月】乳歯の生え始めでむず痒いため
赤ちゃんは生後8か月ごろから乳歯を生え始めます。乳歯の生え始めは歯茎がむず痒くなるため、舌を出し入れすることがあります。
赤ちゃんが舌を出すのは、以下のようなサインである可能性もあります。
ジェスチャー表現
赤ん坊の場合、楽しい感情や関心があることを示すために、舌を出すことがあります。
お腹が空いている
赤ちゃんはお腹が空いていると、舌を前に出して唇を舐めるような動作を行います。
ゲップがうまく出せない
幼い赤ちゃんは、自分でゲップがうまく出せません。舌を出しているのも、ゲップがうまく出せないサインである可能性があります。
ミルクを飲んだあとに細かく舌を出している場合は、抱き起こして背中を優しくトントンと叩いてあげるとよいでしょう。
単なる癖
上記の異常がなく、単純に舌を無意識に前に出す癖があるケースも考えられます。歯科矯正中に歯と歯の間に隙間ができると、舌を隙間に無意識に入れる患者さんがまれにいらっしゃいます。

赤ちゃんが頻繁に舌を出していると「何かの病気かな?」と不安になるパパママも多いのではないでしょうか。ここでは赤ちゃんが舌を出す場合に可能性として考えられる病気を紹介します。
口呼吸
赤ちゃんは鼻の気道がまだ小さく鼻呼吸が難しいです。口呼吸になると呼吸しやすくするために舌を前に出すことも多いです。また、喉の扁桃に問題がある場合も口呼吸になる傾向が高くなります。
鼻詰まり
鼻水によって鼻が詰まっていると、自然と口呼吸になります。口呼吸になると口を閉じにくくなり、その結果舌が出てしまうことがあります。
もし舌が頻繁に出ていて、鼻が詰まって息苦しそうにしている場合は、小児科に相談してみましょう。
口の中に傷ができている
何らかの原因で口の中に傷ができ、それが気になって舌を出し入れしている可能性もあります。もし舌の癖が気になる場合は、口の中の様子を見てみましょう。
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
クレチン症とは、何らかの原因で甲状腺ホルモンがうまく作られないことにより発症する病気です。クレチン症になると以下のような顔つきの特徴がみられます。
まぶたが腫れぼったい
鼻が低い
口を常に開けている
舌が大きい
これらのうち、口を開けている、舌が大きいという特徴が、舌がよく出ている原因になります。
舌が大きい(舌肥大症)
舌が非常に大きいと、口の中に収まらず舌を前に出さないといけないような状態が続きます。
下あごが小さい(小下顎症)
舌のサイズが平均でも、下あごが小さいと口の中での舌の収まりが悪くなります。

舌を出す癖など、赤ちゃんのころの下の癖が続くと、以下のようなものに影響を与えることがあります。
歯並び・噛み合わせ
舌の癖は、以下のような歯並びの悪化を招き、その結果噛み合わせが乱れることがあります。
上顎前突:いわゆる出っ歯
開咬:奥歯を噛み合わせても前歯が噛み合わない
空隙歯列:いわゆるすきっ歯
反対咬合:いわゆる受け口
叢生:ガタガタの歯並び
歯ぎしり・食いしばり
実は舌には正しいポジションがあります。それは以下のような条件に当てはまる下の位置です。
上あごについている
上の前歯の少し後ろに触れる
舌が正しいポジションにないと、歯ぎしりや食いしばりの原因になったり、舌が低位置になる(低位舌)ことで気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群の原因になったりすることもあります。
発音・滑舌
舌の癖によって歯並びが乱れると、発音にも影響を及ぼします。たとえば舌を前に出す癖によってすきっ歯になると、会話の際に歯と歯の間から空気が漏れ、うまく発音できない原因に。
また舌の癖によって舌の筋力が正しく発達しないことも、発音や滑舌に影響を及ぼす一因になります。
飲み込み
赤ちゃんのころの舌の癖が抜けないと、咀嚼や嚥下の際に悪影響を及ぼす可能性もあります。たとえば舌が上がりにくい状態になっていると、咀嚼した食べ物を喉の方向へうまく運びにくくなることがあります。

次に舌を前に出す癖を止めさせる方法を紹介します。舌を前に出す癖は、出っ歯、上下の歯の間の隙間(開咬)、すきっ歯などの原因になるので、なるべく早く対処しましょう。
筋機能療法(MFT)
舌の正しい位置は上あごの前歯の裏です。舌の筋肉を鍛えて、正しい舌の位置(上のイラスト 青矢印)を覚えさせます。ボタンを使う方法や、「あいうべ体操」「パタカラ体操」などがあります。
舌を前に出す癖を止めさせる
特に異常がなく、舌を前に出すのであれば、癖づいている可能性が高いです。子供に癖がある場合、家族である皆さんが注意するようにしましょう。
舌癖除去装置
頻度は少ないですが、歯の裏側に装置をつけて、舌を前に出す癖を止めさせることがあります。
喉の扁桃腺の切除
喉の扁桃腺が大きく、鼻の気道を狭くしている場合、耳鼻咽喉科で扁桃腺を切除することで口呼吸を改善し、舌突出癖も治る可能性があります。
外科手術
舌が大きければ、口腔外科で舌を切除することもあります。下あごが小さければ、外科手術により下あごを前に出すことも考えられます。
舌は筋肉の塊です。舌で歯を押し続けると歯が動く原因になります。当然、大人でも舌の力により歯が動くことがあります。舌を頻繁に前に出す癖を子供がしているのを見つけたら、一度歯科医院で診てもらいましょう。
本記事に書かれている内容は一般的なものです。お子さんの状況により歯科医院の対応が変わる可能性があります。舌を前に出す癖について詳しいことは歯科医院でしっかりと説明を受けるようにしましょう。
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