妊娠中に歯科矯正はできる?知っておきたい注意点と進め方を解説

「妊娠中でも矯正ってできるのかな?」
「赤ちゃんへの影響はない?痛みや薬は大丈夫?」
妊娠は心と体の大きな転機であり、不安定な時期だからこそ、矯正治療を受けていいのか悩んでしまうこともあります。
結論からお伝えすると、妊娠中でも歯科矯正は可能です。ただし、つわりや体調の変化、処置に使う薬やレントゲンなど、妊娠中ならではの注意点を踏まえた上で進めることが大切です。
この記事では、妊娠中に矯正治療を行う際のリスクと安全対策、治療を始めるベストなタイミング、さらに実際に治療を受けた方のリアルな体験談までをご紹介します。
目次
- 妊娠中でも矯正治療は可能
- 矯正中に妊娠が発覚した場合でも、継続してOK
- 妊娠がわかった時点で、クリニックに相談するのがおすすめ
- 妊娠中の矯正で気をつける5つのポイント
- ①レントゲン撮影を避ける
- ②麻酔を避ける
- ③抜歯の時期は安定期以降が望ましい
- ④虫歯・歯周病の予防は最優先
- ⑤長時間の処置時の体勢に注意
- つわり中は無理せず一時休止もOK
- 妊娠中に矯正治療を受けた人の声
- ポジティブな声
- ネガティブな声
- 妊娠中の歯科矯正でよくある質問
- 歯科矯正の開始は妊娠前と出産後どっちがいいですか?
- 悪阻が激しいときでも続けられますか?対策は?
- 妊娠前に矯正治療を終える方法はありますか?
- 妊娠中の歯科矯正の費用は?治療期間で変動しますか?
- 痛み止めを飲んでも問題ありませんか?
- 途中でお休みすることはできますか?
- 分娩時に矯正装置をつけたままでも大丈夫ですか?
- 妊娠中に矯正をした人の症例
- 妊娠中に歯科矯正を検討している方は歯科医師にご相談

妊娠中でも、原則として矯正治療を受けることは可能です。
とくにマウスピース矯正のように取り外しができるタイプの装置は、身体への負担が少なく、妊娠中でも無理なく続けられる場合が多いです。
矯正中に妊娠が発覚した場合でも、継続してOK
矯正治療中に妊娠が判明しても、基本的には治療を中断する必要はありません。マウスピース矯正やワイヤー矯正を含め、多くのケースで治療を継続できます。
ただし、治療の進行状況によっては、妊娠週数や体調に応じて内容や日程を調整する必要があるため、担当の歯科医師に早めに相談することが大切です。
妊娠中でも適切な対応をとれば、安心して矯正治療を続けることができます。無理のないペースで進めながら、赤ちゃんとご自身の体を第一に考えて治療を受けましょう。
妊娠がわかった時点で、クリニックに相談するのがおすすめ
妊娠が判明したら、できるだけ早めに矯正治療を受けているクリニックに報告
しましょう。
妊娠中は体調の変化が起こりやすく、治療中に必要となるレントゲン撮影や麻酔の使用、抜歯のタイミングなどには配慮が必要です。
早めに妊娠の事実を伝えておくことで、妊娠週数や体調に合わせて治療計画を柔軟に見直すことができます。
また、体調などに合わせて定期検診の日程を調整するなど、妊婦さんの負担を減らす対応も受けやすくなります。
妊娠中でも矯正治療は可能ですが、安心して治療を進めるためには、いくつかの注意点があります。
ここでは、妊娠中に矯正治療を受ける際に意識しておきたい5つのポイントについて解説していきます。
①レントゲン撮影を避ける

矯正治療では、歯や顎の状態を正確に把握するために、複数回にわたってレントゲン撮影が行われます。
とくに治療開始前のレントゲンは、治療計画を立てる上で欠かせない資料です。
しかし、妊娠中のレントゲン撮影は基本的に避けるのが望ましいとされています。
歯科用のレントゲンは腹部から離れており、防護用のエプロンも使用されるため、胎児への影響は基本的にはほとんどないといわれています。
しかしクリニックによっては、妊娠中の患者にはレントゲン撮影を行わない方針を取っている場合もあります。
妊娠に気づかずに撮影してしまった場合も基本的には問題ありませんが、妊娠中であることが分かっている場合は必ず事前に医師に相談し、判断を仰ぐようにしましょう。
②麻酔を避ける
矯正治療の一部には、処置時に麻酔が必要となるケースがあります。
たとえば、歯を効率よく動かすために「アンカースクリュー」と呼ばれるチタン製のネジを顎の骨に埋め込む処置では、局所麻酔を使用するのが一般的です。
こうした処置は、矯正の初期段階に行われることが多いため、治療中に妊娠が判明した場合は、すでに麻酔を伴う処置が終わっているケースも少なくありません。
一方で、妊娠がわかってから矯正を始める場合には、事前にどのような処置が必要かを確認し、麻酔の有無について医師と相談しておくことが大切です。
局所麻酔は胎児への影響が少ないとされていますが、処置のタイミングを安定期にずらすなど、体調と妊娠週数に応じた配慮が求められます。
③抜歯の時期は安定期以降が望ましい

矯正治療で抜歯が必要となる場合、妊娠中であっても処置自体は可能です。
抜歯後に使用する麻酔や薬も、胎児への影響が少ないものを選ぶことができるため、医師の管理のもとであれば安全に行うことができるでしょう。
しかし、妊娠初期は胎児の成長にとって重要な時期であり、薬剤の影響を最も受けやすいとされています。
また、つわりなどで体調が不安定になりやすい時期でもあるため、この時期にあえて抜歯を行うことはおすすめできません。
そのため、妊娠中に抜歯が必要な場合は、母体の体調が安定し、薬剤の影響も比較的少ないとされる「妊娠中期(安定期)」以降にスケジュールを調整するのが理想です。
なお、すでに矯正治療を始めており、妊娠発覚時に抜歯が完了している場合は、とくに心配する必要はありません。
抜歯が必要かどうか、またその時期については、妊娠の状況と治療計画をふまえて歯科医師としっかり相談し、無理のない方針を決めるようにしましょう。
④虫歯・歯周病の予防は最優先
妊娠中はホルモンバランスの変化により、虫歯や歯周病のリスクが大きく高まります。
とくに女性ホルモンの急激な増加は、歯周病の原因菌を活性化させ、歯ぐきの腫れや出血を引き起こしやすくなります。
さらに、唾液の分泌量や自浄作用も低下し、口腔内の環境が悪化しやすい状態になるのです。
矯正治療中は装置の影響で歯磨きがしづらくなることもありますが、デンタルフロスや歯間ブラシを活用し、磨き残しを防ぐようにしましょう。
⑤長時間の処置時の体勢に注意

矯正治療では、定期的な調整や経過観察のために、歯科用チェアに横になって診察を受ける機会が多くありますが、通常さほど負担にならない体勢でも妊娠中には注意が必要です。
とくに妊娠8ヶ月(28週)以降に仰向けの姿勢を長時間続けると、お腹の大きさや胎児の重みによって、大きな血管(下大静脈)が圧迫され、「仰臥位低血圧症候群」を引き起こすことがあります。
発症するとめまいや吐き気、血圧低下といった症状を招き、重症の場合は胎児への酸素供給が妨げられることで胎児の健康にも影響を与えます。
そのため、妊娠後期に矯正治療を受ける際は、診察中の体勢に配慮することが大切です。妊娠の事実をしっかりと伝えるとともに、診察中に気分が悪くなった場合はすぐに歯科医師やスタッフに申し出ましょう。
妊娠初期に多くの方が経験する「つわり」は、矯正治療にも少なからず影響を及ぼします。
このようなときは、無理に治療を続けようとせず、一時的に通院や装置の調整を休止するのも選択肢のひとつです。
矯正治療は数ヶ月単位の長期的な計画で進められるため、体調を最優先にし、つわりのピークが過ぎてから再開する形でも大きな問題はありません。
一時休止を検討する際は、必ず担当の歯科医師に相談し、今後のスケジュールを調整してもらいましょう。
ここまで、妊娠中でも矯正治療は継続できることや、注意すべきポイントについて解説してきました。とはいえ、「実際に妊娠中に治療を受けた人はどんな体験をしたのか」など、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで、実際に妊娠中に矯正治療を受けた方々の体験談をご紹介します。
ポジティブな声
マウスピース矯正中は装着中に飲食ができないため、自然と間食の回数が減ったという声もあります。
この方は、授乳期に小腹が空いても、マウスピースの着脱が面倒に感じて我慢することが多くなり、その結果、妊娠前の体重まで戻すことができたそうです。
マウスピース矯正中は、基本的に装着中に飲めるのは水か炭酸水のみとされているため、コーヒーやジュースなどの飲料を自然と控える生活になります。
この方は、妊娠確定後もその習慣が続き、無理なくカフェインを断つことができたと話しています。
ネガティブな声
妊娠中の体調変化、とくにつわり(悪阻)の時期には、マウスピースの装着そのものが辛く感じられることも。
この方は、マウスピース矯正をしていたものの、つわりによる気持ち悪さで装着を続けることが辛かったと話しています。
妊娠中はつわりや嗜好の変化によって、「これなら食べられそう」と思える食品が限られることがあります。
そんな中、矯正治療による歯の痛みや噛みにくさが重なると、思うように食事がとれず、ストレスを感じてしまうこともあるようです。
妊娠中は、つわりの一環として「嘔吐反射」が強くなることがあります。この方は、マウスピースの装着 自体が辛くなり、矯正を一時中断せざるを得なかったそうです。
その結果、治療をストップしていた間に歯並びが後戻りしてしまい、再度ワイヤー矯正を行うことになったと話しています。

妊娠中の歯科矯正に関して、よくある質問を紹介します。
歯科矯正の開始は妊娠前と出産後どっちがいいですか?
矯正治療を始めるベストなタイミングは、ライフスタイルや体調、育児の状況によって人それぞれ異なります。
妊娠前に矯正を始める場合は、レントゲン撮影や抜歯など、妊娠中には制限されやすい処置も問題なく行えるため、計画通りに治療を進めやすいというメリットがあります。
ただし、治療中に妊娠が判明した場合、つわりの影響で装置の装着がつらくなったり、通院が難しくなったりすることがあります。
継続可能かどうかは、そのときの体調次第となるため、歯科医師と密に相談しながら無理のない対応が求められます。
出産後に矯正を始める場合は、ホルモンバランスが落ち着いた後に治療を開始できる点が安心ですが、出産直後は体力の回復や育児の忙しさから、すぐに治療に取りかかるのが難しいケースもあります。
少なくとも産後2〜3ヶ月は様子を見て、体調と生活リズムが安定してからのスタートが望ましいでしょう。
また、産後の通院では赤ちゃんを預ける必要があるため、家族の協力体制が整っているかも重要なポイントです。
赤ちゃん連れでの通院を希望する場合は、事前にクリニックに受け入れ体制があるかどうか確認しておくと安心でしょう。
悪阻が激しいときでも続けられますか?対策は?
悪阻(つわり)が辛い時期でも、本人の体調と希望によっては矯正治療を続けることは可能です。
しかし、無理をして治療を継続することで、かえって体調が悪化することもあるため注意しましょう。
とくに矯正装置を装着することで、口腔内に異物感が生じたり、においや圧迫感が悪阻をさらに強めてしまったりすることがあります。
悪阻が激しいときは無理をせず、治療を一時的にお休みするのがおすすめです。どうしても治療を続けたい場合は、通院の頻度や診察時間の調整なども含めて、歯科医師に相談して対策を講じてもらいましょう。
マ ウスピース矯正の場合は、矯正装置の装着時間を短くする、奥歯の部分をカットしてもらうなどの対策をとってもらえます。
妊娠前に矯正治療を終える方法はありますか?

妊娠中は体調の変化が起こりやすい時期であるため、「可能であれば妊娠前に矯正治療を終わらせたい」という人も多いでしょう。
しかし、歯科矯正は虫歯治療と異なり、ある程度の期間を要します。
具体的な治療期間は症例により異なりますが、目安としては以下の通りです。
全体矯正 | 部分矯正 | |
---|---|---|
表側矯正 | 1〜3年程度 | 2ヶ月〜1年程度 |
裏側矯正 | 2〜3年程度 | 5ヶ月〜1年程度 |
ハーフリンガル矯正 | 2〜3年程度 | 5ヶ月〜1年程度 |
マウスピース矯正 | 1〜3年程度 | 2ヶ月〜1年程度 |
さらに、歯科クリニックによっては最初の相談から矯正開始まで1〜2ヶ月かかるケースもあるため、妊娠前に歯科矯正を終えたい場合は、なるべく早い段階で矯正相談に行くことが大切です。
マウスピース矯正 Oh my teethの部分矯正プランは、最短2ヶ月(※)。マウスピース矯正キットお届けまでは最短10日です。
※2020/1~2023/7 Basicプランの実績値(保定期間除く) 。マウスピース矯正キットが自宅に届くまでの期間は契約状況や矯正シミュレーション作成・承認状況などによって前後します。
※最短10日とは、無料診断当日に契約し、矯正シミュレーション作成に進んだ場合の例です。
妊娠中の歯科矯正の費用は?治療期間で変動しますか?

歯科矯正の費用は、下記のように矯正方法により異なります。
全体矯正 | 部分矯正 | |
---|---|---|
表側矯正 | 60〜130万円 | 30〜60万円 |
裏側矯正 | 100〜170万円 | 40〜70万円 |
ハーフリンガル矯正 | 80〜150万円 | 35〜65万円 |
マウスピース矯正 | 60〜100万円 | 10〜40万円 |
そのうえで、歯科矯正は原則として自由診療(保険適用外)となるため、妊娠しているかどうかにかかわらず、基本的な治療費は大きく変わりません。
ただし、治療期間や通院回数が変動することで、トータルの費用に影響が出るケースがあります。
たとえば、治療の進行に応じて毎回の通院時に「調整料」や「観察料」が加算される料金体系のクリニックでは、つわりや体調不良によって治療スケジュールがずれ込み、予定よりも期間が長引くとそのぶん費用がかさむ可能性があります。
一方、治療開始時にすべての費用をまとめて提示する「トータルフィーシステム」を導入しているクリニックであれば、治療期間が多少延びたとしても追加費用が発生しないケースがほとんどです。
妊娠中は予期せぬ体調の変化が起こりやすいため、費用面の不安を減らすためにも、料金体系について事前にしっかり確認しておくと安心でしょう。
マウスピース矯正 Oh my teethの矯正プランは33万円と66万円の2種類。矯正プラン料金以外の費用が発生することは基本的にありません。
※マウスピースを破損・紛失した場合などは追加費用が必要です。
痛み止めを飲んでも問題ありませんか?
市販の鎮痛薬の中には、妊娠中の服用が推奨されていない成分が含まれていることがあります。胎児の発育に影響を及ぼすリスクがあるため、自己判断で薬を服用することは絶対に避けてください。
痛みが辛い場合は、まず矯正治療を担当している歯科医師に相談し、妊娠中でも服用が可能な痛み止めがあるか確認しましょう。
また、併せて産婦人科の担当医にも伝えておくと安心です。
歯科と産科の双方で情報を共有しながら対応することで、母体にも胎児にもやさしい安全な治療が可能になります。
途中でお休みすることはできますか?
妊娠中に体調が不安定になったり、つ わりが辛くなったりした場合には、矯正治療を一時的にお休みすることも可能です。
矯正は長期にわたって行う治療のため、短期間中断したからといって、すべてが台無しになるということはありません。
実際にマウスピース矯正 Oh my teeth では、つわりの時期に日中の装着を一時的に控えながら、無理のないペースで治療を続けたユーザーもいます。
妊娠中はホルモンの影響で口腔内が敏感になったり、些細な不快感が大きなストレスにつながることもあるため、無理をせず柔軟に対応することが大切です。
分娩時に矯正装置をつけたままでも大丈夫ですか?
基本的に、矯正装置は分娩時にも装着したままで問題ありません。
ワイヤー矯正などの固定式装置であれば、出産中に外れる心配もなく、特別な処置をする必要はないとされています。
ただし、マウスピース矯正のような着脱可能なタイプの装置を使用している場合は注意が必要です。
分娩時は強い力で歯を噛みしめる場面があるため、マウスピースが破損したり、口腔内を強く圧迫してしまったりする可能性があります。
実際には、分娩の最中にマウスピースが邪魔になると感じる方や、破損を心配して外しておくことを選ぶ方もいます。装着したままで 不安がある場合は、事前に外しておくと安心して出産に臨めるでしょう。
いずれの場合も、出産前にあらかじめ歯科医に相談し、自分の矯正装置のタイプや出産時の対応について確認しておくことをおすすめします。
ここでは、妊娠中にOh my teethのマウスピース矯正で歯並びが改善した人の症例を紹介します。

年代・性別:30代前半女性
総額:33万円 (税込)
期間:5ヶ月
備考:非抜歯/部分矯正/研磨処置込
矯正開始後に妊娠され、体調が安定するまでマウスピースの装着時間を調整しながら矯正を完了されたユーザーの症例です。治療期間は5ヶ月です。
