歯並びが悪いと歯周病になりやすいのはなぜ?理由や対策を紹介
歯周病は歯垢(プラーク)の中の細菌によって起こる感染症ですが、近年は歯並びの悪さもリスク因子の一つとして挙げられています。
そこで本記事では、歯周病治療のスペシャリストである若林歯科医院 院長の若林 健史さんに歯周病と歯並びの関係についてお伺いしました。
歯並びの悪さが歯周病にどのような影響を与えるのかをはじめとし、歯周病になりやすい歯並びも紹介しているので、自身の歯並びが気になる方は要チェックです。
また歯並びの悪さによって歯周病リスクがある方は、記事後半で紹介している歯周病対策を参考にご覧ください。
目次
歯周病は歯垢(プラーク)に含まれる細菌によって引き起こされる病気です。「歯周ポケット」と呼ばれる、歯と歯茎の境目に細菌が溜まることで、その周辺が炎症を起こして赤く腫れたり、出血したりします。
歯周病は虫歯と並んで歯科の二大疾患とされていますが、虫歯とは異なり、痛みなどの自覚症状がほとんどありません。
そのため、気付いた頃には症状が進行している場合が多いです。症状が進行すると歯を支える骨が溶けて、歯がグラグラしたり、抜けたりすることがあります。
歯周病の直接的な原因は歯垢に含まれる細菌ですが、近年では喫煙や糖尿病など、さまざまな要素が歯周病のリスクを高める因子(リスクファクター)として挙げられています。歯並びの悪さもその一つです。
歯並びの悪さが歯周病リスクを高める理由は以下の通りです。
汚れが残りやすいため
歯並びが悪いとブラッシングが十分に行き届かず、汚れが残りやすくなります。とくに歯と歯が重なっている箇所は汚れが残りやすく、歯垢が蓄積されやすいため、デンタルフロスや歯間ブラシを使う、プラークチェッカーで歯垢を確認するなど、丁寧なケアが必要です。
磨き残しが増えると、蓄積された歯垢が石灰化し、歯磨きだけでは除去しにくい歯石へと変化します。このような状態になると、汚れが長期的に歯に定着し続けるため、歯周病リスクが高くなります。
噛み合わせが悪いため
歯並びが悪いと、当然噛み合わせにも問題が生 じます。食事や歯ぎしりなどによって特定の歯が強く接触すると、その歯を支える歯茎に大きな負担をかけ、歯周病の症状が進行しやすくなります。
口呼吸になりやすいため
出っ歯や受け口など、口呼吸になりやすい歯並びの場合は口腔内が乾燥しやすく、歯周病の原因菌が繁殖しやすいため、注意が必要です。
口呼吸をすると唾液の自浄作用が働かず、歯周病の原因菌を除去しにくくなります。
前述した理由から、歯並びが悪い人は歯並びが良い人に比べて歯周病リスクが高いです。中でも以下のような歯並びは歯周病リスクが高いため、注意が必要です。
叢生
上顎前突
下顎前突
開咬
ここでは、それぞれがどのような歯並びなのか、なぜ歯周病になりやすいのか解説します。
叢生
叢生(そうせい)は「乱ぐい歯」とも呼ばれ、日本人の不正咬合では最も多く見られる歯並びです。八重歯やガタガタとした歯並びも叢生に含まれます。
主な原因は、歯の大きさと顎の大きさが合わないことです。口腔内に歯が生えるスペースが十分にないと、歯が重なり合って生えたり、前後で互い違いに生えたりします。
叢生は凸凹とした歯並びであるため、ブラッシングが行き届かず、歯垢が残ることが多いです。とくに歯並びが全体的にガタガタとしている場合や、歯が並ぶアーチが大きく歪んでいる場合は汚れが残りやすいため、歯磨きに加えてデンタルフロスを使うなど、丁寧なケアが欠かせません。
上顎前突
上顎前突(じょうがくぜんとつ)とはいわゆる「出っ歯」のことで、 上の歯が前方に突き出ている状態を指します。遺伝や口呼吸によって顎の形成に問題が生じる、あるいは幼児期の指しゃぶりなどで歯だけが前に出てしまうことが原因です。
上顎前突は口を閉じるのが難しく、唾液が乾燥して自浄作用が働きにくくなるため、歯周病を進行させる可能性があります。叢生を伴う上顎前突の場合は歯垢が残りやすく、さらに歯周病リスクが高くなります。
下顎前突
下顎前突(かがくぜんとつ)は下顎が上顎より前に出ている状態を指します。「受け口」や「しゃくれ」とも呼ばれ、遺伝や幼児期の癖が原因で起こることが多いです。
下顎前突は上下の歯の噛み合わせが通常と逆であるため、歯を噛みしめたときに下の前歯が上の前歯を突き上げたり、奥歯の一部に負担がかかったりしやすいです。そのまま放置していると、歯茎が下がって歯周病の症状を進行させる可能性があります。
また、磨き残しが発生しやすく、口を閉じるのが難しいため、細菌が繁殖して歯周病を引き起こす可能性も高いです。
開咬
開咬(かいこう)は「オープンバイト」とも呼ばれる歯並びで、文字通り、奥歯で噛み合わせたときに前歯が当たらない状態を指します。遺伝による骨格的な問題や幼児期の癖、舌や口まわりの筋肉の使い方に癖があることが原因です。
開咬は不正咬合の中でもとくに歯に過剰な負担がかかりやすいため、歯周病リスクの高い歯並びとされています。また、上顎前突・下顎前突と同じく、口が開いた状態になりやすいため、口腔内が乾燥して歯周病菌が繁殖することが多いです。
歯並びが悪い場合の歯周病対策は以下の通りです。
丁寧にケアを行う
歯並びに関係なく、歯周病を予防するには丁寧なケアが欠かせません。ブラッシングが届きにくい箇所には、ワンタフトブラシと呼ばれる特殊な歯ブラシやデンタルフロスを使用しましょう。
磨き残しが気になる場合は、プラークチェッカー(歯垢染色液)を使うのもおすすめです。歯垢が染まるため、磨き残しやすい箇所を確認できます。
矯正治療を行う
歯並びによっては、ワンタフトブラシやデンタルフロスを使用しても歯垢が除去できない場合があります。そのような歯並びの方は、矯正治療で根本的な解決を図るのがベストです。
とくに下顎前突や開咬は噛み合わせが悪く、一部の歯に過剰な負担がかかりやすいため、放置せずに歯並びを改善したほうが歯周病リスクを下げられます。
ただし、既に歯周病と診断された場合は、状態によって矯正治療が受けられない場合もあります。軽度の歯周病であれば治療を終えたあとに矯正治療を行うことが可能です。
矯正治療を検討している方は、まず自身が歯周病であるか、症状がどのぐらい進行しているか歯科クリニックで診てもらいましょう。
ロイテリ菌(プロバイオティクス)による予防
近年では、ロイテリ菌などを活用した口腔内細菌叢を善玉菌へと変える「プロバイオティクス」と呼ばれる予防法も広まっています。
そもそもロイテリ菌は⼝腔内細菌叢のバランスを整える乳酸菌のこと。ヨーグルトやタブレットなどで定期的にロイテリ菌を摂取し、口腔内へ定着させることで歯周病の予防効果が期待できます。
また食べ物以外でロイテリ菌を取り入れたい方は、ロイテリ菌が配合された歯磨き粉を活用するのもおすすめです。
歯並びの悪さは歯周病に大きな影響を与えます。凸凹とした歯並びや出っ歯、受け口はブラッシングが行き届かないことが多く、歯周病の原因である細菌が繁殖しやすいため注意が必要です。
また、開咬のように嚙み合わせが悪い歯並びは、特定の歯に負担を与えることで歯茎が炎症を起こしやすくなり、歯周病リスクを高めます。
いずれの歯並びも、問題を根本的に解決するには歯科矯正が必要不可欠です。大切な歯を守るためにも、ぜひ歯並びの改善を検討してください。ただし、歯周病に罹患している場合は矯正治療を受けられません。まずは歯科 クリニックで自分の歯を診てもらいましょう。
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