歯科矯正で使うアンカースクリューとは?気になる痛みや費用も解説
突然ドクターに、「アンカースクリューの装着が必要です」と言われたら、「アンカースクリューって何?」「ネジをつけるって、痛くないの?」と驚きとともに恐怖心すら感じてしまいますよね。
しかし歯科矯正治療ではアンカースクリューを使用することで、デメリットよりむしろメリットの方が多くなるのも事実。
そこで本記事では、吉祥寺矯正歯科クリニック の鈴木 美穂先生監修のもと、 みなさんの不安を解消するために、アンカースクリューについて詳しく説明します。
また、気になるアンカースクリューの痛みや費用などについても解説していきますので、アンカースクリューの装着でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
鈴木 美穂
日本歯科大学卒業後、日本歯科大学附属病院にて研修に励み、日本歯科大学矯正学講座に入局し、日本矯正歯科学会認定医を取得。その後、医療法人社団矯栄会 六本木 広瀬矯正歯科にて経験を積む。日本大学大学院 歯学研究科の博士課程を修了し、博士号を取得。2020年に吉祥寺矯正歯科クリニックを開院する。日本矯正歯科学会、東京矯正歯科学会、顎変形症学会、日本口蓋裂学会、日本歯科保存学会、日本接着歯学会など多数の学会に所属している。
目次
- 歯科矯正用アンカースクリューとは?
- 歯科矯正でアンカースクリューの装着が必要な人は?
- ヘッドギア(顎外装置)をつけられない人
- 歯の固定源に不足がある人
- ガミースマイルや口ゴボの人
- 出っ歯の人で奥歯をこれ以上前に動かしたくない人
- 外科手術が軽度必要な人
- 埋まっている大人の歯の掘り起こし、使う必要がある人
- アンカースクリューは痛い?痛くない?
- アンカースクリューを設置するとき
- アンカースクリューの装着中
- アンカースクリューを外すとき
- 矯正でアンカースクリューのメリット
- 非抜歯での矯正治療が実現
- 矯正期間の短縮
- 外科治療の回避
- 埋まっている大人の歯が使える
- アンカースクリューのデメリット
- 感染リスクがある
- アンカースクリューが脱落する可能性がある
- 歯根の損傷リスクがある
- 口腔外科のある他院へ行かなければならない
- 治らない場合もある
- 矯正でアンカースクリューを装着する場合の費用
- アンカースクリューの装着は保険が適用される?
- アンカースクリューの値段相場
- アンカースクリュー併用の矯正費用を抑えるコツ
- 【矯正効果UP】アンカースクリューで理想の歯並びに!
歯科矯正用アンカースクリューとは、矯正治療の際に使われる、とても小さな(直径1.4mm・長さ6mm程度)チタン製の医療用ネジのことです。
このアンカースクリューをあごの骨に埋め込むことで、歯を動かすときの固定源となり、より効率的に矯正治療を進めていくことができます。
従来は、固定源は奥歯にするしかありませんでした。しかし、そうすると前歯を奥へ引っ張ろうとする力で、逆に奥歯まで前に動いてしまう反作用が起きてしまいます。
この反作用は、「奥歯と前歯がワイヤーで綱引きをしている状態」とイメージするとわかりやすいかもしれません。
しかしア ンカースクリューは、あごの骨にしっかり埋め込み固定源とすることによって、奥歯が反作用で動くのを防げます。
また、アンカースクリューは設置する場所を選べるため、特定の歯だけを動かすことも可能です。
このように、歯科矯正でアンカースクリューを併用することによって、矯正の効率が上がり難しい歯並びにも対応できるようになりました。
画像出典元:インビザラインのアンカースクリューはどんなときに必要?
主に、以下の項目にあてはまる人は、矯正でアンカースクリューが必要です。
ヘッドギア(顎外装置)をつけられない人
歯の固定源に不足がある人
ガミーマウスや口ゴボの人
ヘッドギア(顎外装置)をつけられない人
ヘッドギアとは、矯正中に動かしたくない歯まで移動してしまうことを防ぐ、頭にかぶる装置のこと。このヘッドギアをつけられない人は、代替案としてアンカースクリューが必要です。
しかし、子どもの場合はあごの骨がまだ成長段階で柔らかく、しっかりとアンカースクリューを固定できません。このような理由から、通常アンカースクリューの設置は16歳以上の人に推奨されています。
そして、ヘッドギアは1日で8〜10時間は装着する必要があり、特に大人はこの装着時間をなかなか確保できません。
そこでヘッドギアを装着できない人は、代わりにアンカースクリューを設置することで、不要な歯の動きを防ぎます。
ヘッドギアは決して快適とは言えない上に、毎日長時間つける手間を考えると、アンカースクリューの設置は負担を軽減できる矯正方法です。
歯の固定源に不足がある人
歯の固定源に不足がある人は、アンカースクリューが必要です。
歯を動かすには支点となる歯が必要ですが、固定源にしたい歯に問題があると、矯正治療で必要な矯正装置をつけられません。
たとえば、固定源の歯が生まれつき小さすぎたり 、虫歯などで損失していたりするケースが考えられます。
しかし、矯正に必要な固定源がないケースでも、アンカースクリューを設置することで、これまで治療が難しかった症例でも矯正が可能になりました。
ガミースマイルや口ゴボの人
ガミースマイルや口ゴボの人が、外科治療を回避するには、アンカースクリューが必要です。(※重度のガミースマイル・口ゴボは外科治療が必要になるケースがあります)
従来ガミースマイルや口ゴボは、通常の歯科矯正で治すのが難しく、多くのケースで外科手術が適応されてきました。
しかし、アンカースクリューの登場で、これまでの矯正では難しかった歯を引っ込める動き(圧下)や、歯 を全体的に後ろに移動させる動きが可能になったのです。
こうしたアンカースクリューの自由自在に歯を動かせる特性を利用して、これまで外科治療で行っていたガミースマイルや口ゴボの治療も、手術せずに治療できるようになりました。
大がかりになる外科治療よりも、アンカースクリューでの矯正治療の方が、より負担が少なくなります。
そして、ガミースマイルや口ゴボは治したいけど手術はしたくない、という方には嬉しい矯正方法です。
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出っ歯の人で奥歯をこれ以上前に動かしたくない人
奥歯が前に移動してしまうことを、ロスすると言ったりもします。矯正治療では、ロスした歯を奥にするすることが1番難しいとされています。無理やり奥にしようとすると歯の根は動かず傾斜だけしてしまうのです。インプラントアンカーの技術を併用することでトルクを利かせ歯体移動ができます。
ですので、後々高難易度の矯正治療が必要にならないようにするためにも、早めにアンカースクリューを行うことがおすすめです。
外科手術が軽度必要な人
ガミースマイルなどを含め、奥歯のコントロールが難しい治療も裏側矯正とインプラントアンカーの併用がおすすめです。そうすることで、オートローテーションを可能にし外科的手術を避け治療することができます。
埋まっている大人の歯の掘り起こし、使う必要がある人
抜くしか方法がなかった歯を開窓術という治療と併用することで使用できます。他の歯などを使い掘り起こしてしまうと、作用・反作用により他の歯が傾いたりするリスクも回避できます。
ここでは、気になるアンカースクリューの痛みを、段階ごとに説明していきます。
アンカースクリューを設置するとき
アンカースクリューの装着中
アンカースクリューを外すとき
アンカースクリューを設置するとき
アンカースクリューを設置するときは、一般的な歯科治療でも使用される局所麻酔で感覚を麻痺させるため、痛みはほとんど感じません。
そしてアンカースクリューを設置するときには、電動トルクドライバーと呼ばれる機械でスムーズに埋め込むため、アンカースクリュー1本あたり平均10〜15分で設置可能です。
実際にアンカースクリューを設置した人からは、「あっという間だった」「痛みは感じなかった」という感想があがっています。
ただし、麻酔が切れた後や、アンカースクリューを設置してから2 〜3日間は、痛みを感じる人がいるのも事実。
しかし、こうした痛みを予測して、歯科クリニックでは痛み止めや化膿止めの薬を処方しています。ですからもし痛みを感じたら、無理に我慢せずに痛み止めを服用しましょう。
痛みの感じ方には個人差がありますが、痛み止めを服用すれば問題ない程度で、我慢できないほどの痛みが出る人は多くありませんので、安心してくださいね。
アンカースクリューの装着中
アンカースクリュー装着中には、口内炎や炎症が起きることで、痛みを感じる ことがありますが、基本的にはほぼ起こりません。可動粘膜に装着してしまった場合や斜めに埋入したときに起こりやすいと言われています。下顎の舌側に装着すると起こりますが、オペのリスクが高いため現在ではほとんど行いません。
口内炎はアンカースクリューの突起などによって、口の中の粘膜が傷つくことが原因。
また、歯みがきなどが不十分で口腔内の清潔を保てないと、アンカースクリューの設置面などから細菌が入り込み、炎症を起こすことがあります。
そして不用意な炎症を防ぐためには、気になっても舌や指でアンカースクリューに触れないようにすることも大切です。
こうした口内炎や炎症を防ぐためにも、アンカースクリュー周りは重点的にしっかり磨いて、口腔内の清潔を保ちましょう。
万が一、炎症の痛みを感じた場合には、アンカースクリューの脱落などの原因にもなりますので、すぐに歯科クリニックに連絡してくださいね。
アンカースクリューを外すとき
アンカースクリューを外すときは、ほとんど痛みを感じません。そのため、局所麻酔を使用しないケースが多いです。
むしろアンカースクリューを外す痛みよりも、麻酔の針を刺す痛みの方が痛いとか。また人によっては、外すときは痛みではなくて「痒かった」と感じる人もいるほどです。
このように、アンカースクリューは設置するときから外すときまで、意外にも痛みが少ないので、過度な心配はいりません。(※痛みの感じ方には個人差があります)