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歯科矯正
最終更新日:2024年5月2日

歯を引っ張る矯正にかかる費用は?保険適用で治療はできる?

歯茎やあごの骨に埋まったまま、生えてこない状態の歯を歯科用語で「埋伏歯(まいふくし)」といいます。

埋伏歯は必ずしもトラブルを起こすわけではありませんが、長期間放置することで、ほかの歯の成長を妨げたり、噛み合わせが悪化したりする可能性があります。

そこで埋伏歯の治療として行われるのが、歯を引っ張る矯正です。本記事では、歯を引っ張る矯正にかかる費用を徹底解説。費用の相場や保険適応となるケースなどを紹介します。

「埋まっている歯があるけれど、費用がわからずなかなか治療に踏み出せない」という方は、ぜひ参考にしてください。

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歯科矯正ブログ編集チーム

木村真由美

Oh my teethでのマウスピース矯正を経て、2021年6月に株式会社Oh my teethにジョイン。マウスピース矯正経験者としてOh my teethのオウンドメディア「歯科矯正ブログ」にて記事を更新中。ミッションは「歯並びに悩むすべての方に歯科矯正の確かな情報をお届けすること」。

歯を引っ張る矯正とは?

歯を引っ張る矯正とは?

歯茎やあごの骨に埋まっている歯を引っ張る矯正は、歯科用語で「埋伏歯開窓牽引(まいふくしかいそうけんいん」といいます。

埋伏歯とは、歯の頭部分である「歯冠」が、あごの骨の大きさや歯の大きさ、歯の本数との不調和などにより、歯茎やあごの骨に埋もれたまま生えてこない状態の歯です。

生えてくるはずの歯がまったく見えない状態のものは「完全埋伏歯」、歯の一部が歯茎から出ているものは「不完全埋伏歯」と呼ばれます。

埋伏歯の多くは親知らずですが、犬歯や中切歯(2番目の前歯)などもなりやすいです。先ほど紹介した埋伏歯開窓牽引は、一般的に親知らず以外の歯が埋伏歯の場合に行われます。

ただし、一言に埋伏歯開窓牽引といっても、開窓と牽引は別ものです。開窓術とは、歯茎を切開し、埋もれている歯の表面を露出させる外科的処置を指します。

一方、牽引は手術で露出した歯に矯正装置を取り付け、埋もれている歯を本来あるべき位置まで引っ張り出す処置です。

埋伏歯の状態によっては、開窓術だけで埋伏歯を生えさせられる場合があります。しかし、開窓術のみで歯が生えるケースは稀で、多くの場合は開窓術を終えたあとに牽引で歯を引っ張ります。

歯を引っ張る矯正の流れ

歯を引っ張る矯正の流れ

症例にもよりますが、歯を引っ張る矯正にかかる期間の目安は2〜3年です。埋伏歯の可能性がある場合は、以下の流れで治療を行います。

  • 検査

  • 埋伏歯開窓牽引の実施

  • 歯列全体の矯正治療

  • 保定の管理

それぞれについて詳しく解説します。

検査

埋伏歯は、歯科検診や治療の際にレントゲンを撮って発覚することが多いですが、歯の本数が足りないことに気づくなど、自身で認識できる場合もあります。

埋伏歯の存在を確認するには、歯科クリニックでの検査が欠かせません。検査では視診や触診に加え、レントゲン撮影で埋伏歯がどの位置にあるか、どのように生えているのかなどを確認します。

埋伏歯開窓牽引の実施

歯科クリニックで検査を行い、歯を引っ張る矯正が必要と判断された場合は、治療計画を立てて埋伏歯開窓牽引を行います。

埋伏歯開窓牽引の手順は以下の通りです。

  • ワイヤー矯正で埋伏歯の萌出スペースを確保する

  • 局部麻酔をする

  • 歯茎を切開して埋伏歯の表面を露出する

  • ゴムなどを使って埋伏歯を牽引する

  • 埋伏歯の移動がある程度進んだら、ブラケット(矯正装置)を付けなおして再び牽引する

埋伏歯の開窓術は10分程度で終わりますが、牽引は平均で半年から1年ほどの期間がかかります。

牽引期間は歯に大きな負担をかけないよう、7日から10日間に1回のペースで来院し、器具の調整を行います。

歯列全体の矯正治療

牽引によって埋伏歯が萌出できたら、今度はワイヤー矯正で歯列全体の矯正を行います。なぜなら、埋伏歯を本来あるべき位置に戻した場合、噛み合わせが変わりやすいためです。

牽引後は状態にもよりますが、ワイヤー矯正とマウスピース矯正のいずれかで歯並びを整えます。

ただし、埋伏歯を牽引している期間はマウスピース矯正ができないため、最初から最後までワイヤー矯正のみで治療を行う場合が多いです。

保定の管理

歯並び・噛み合わせが整ったら、矯正装置を取り外し、リテーナー(保定装置)を装着します。

リテーナーとは、歯を固定するための装置です。矯正完了後は歯が不安定な状態なため、「後戻り」といって、歯が元の位置に戻る場合があります。

リテーナーは後戻りを防ぐためのもので、一定の期間装着しなければなりません。装着期間は人にもよりますが、少なくとも矯正期間と同じぐらいの期間は装着する必要があります。

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歯を引っ張る矯正にかかる費用

歯を引っ張る矯正にかかる費用

歯を引っ張る矯正にかかる費用は以下の通りです。

  • 精密検査・診断:1万~6万5,000円程度

  • 埋伏歯開窓術:2万~5万円程度

  • 開窓後の牽引:5万円〜15万円

  • 矯正治療:10万~170万円程度

  • 調整料(処置料):1回につき3,000~1万円程度

  • 保定装置:1万~6万円程度

  • 観察料:1回につき3,000~5,000円程度

歯を引っ張る矯正では、一般的に埋伏歯開窓牽引のあとに歯科矯正が行われることが多いです。そのため、全体的にかかる費用は100万円前後と高額になる傾向にあります。

中でも大きく影響するのが、矯正治療にかかる費用です。矯正治療にかかる費用は矯正方法によって異なります。主な矯正治療にかかる費用の相場は以下の通りです。

全体矯正

部分矯正

表側矯正

60万~130万円

30万~60万円

裏側矯正

100万~170万円

40万~70万円

ハーフリンガル矯正

80万~150万円

35万~65万円

マウスピース矯正

60~100万円

10~40万円

また、上記に加え、精密検査によって虫歯・歯周病などが発覚した場合や、リテーナーの作り直しが必要となった場合は追加費用がかかることがあります。

「思っていたよりもお金がかかってしまった」という事態を避けるためにも、歯を引っ張る矯正を行う場合は歯科クリニックで各費用をしっかりと確認しましょう。

歯を引っ張る矯正が保険適用となるケース

歯科矯正は基本的に自由診療となります。ただし、日本矯正歯科学会が定めた特定の条件を満たした症例であれば、保険適用の対象になることがあります。

日本矯正歯科学会が定める「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合」は以下の通りです。

①「厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
②前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療
③顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・手術後の矯正歯科治療

なお、これら保険適用される矯正歯科治療を行える医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみになります。

出典: 矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは | 公益社団法人 日本矯正歯科学会

歯を引っ張る矯正も保険適用となる場合がありますが、該当するのは前歯にある3本以上の埋伏歯が原因で噛み合わせに問題があり、かつ埋伏歯開窓術が必要と診断された場合のみです。

条件を満たしていない場合は、矯正治療を含むすべての治療が保険適用外となります。

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歯を引っ張る矯正の費用に関するよくある質問

歯を引っ張る矯正の費用に関するよくある質問

ここでは、歯を引っ張る矯正の費用に関するよくある質問を紹介します。

Q.どの歯を引っ張るかで費用は変わりますか?

基本的には埋伏歯の位置を問わず、どの歯を引っ張る場合も同じ料金で治療を行う歯科クリニックが多いです。

ただし、中には引っ張る歯の位置によって費用が異なる歯科クリニックもあります。

歯科クリニックの多くは、患者の負担を減らすために、デンタルローンやクレジットカード払いなどの分割払いに対応しています。

費用に不安がある場合は、歯科クリニックでの検査で埋伏時が確認された際に、支払い方法などを相談してみるとよいでしょう。

Q.歯を引っ張る矯正は大人と子どもで費用が違いますか?

歯を引っ張る矯正は、歯が生え変わる時期の子どもが行う場合が多いですが、大人が治療をした場合も費用はそこまで変わりません。

ただし、保険適用内で治療を受ける場合は、大人と子どもで自己負担額が変わる場合があります。

子どもが保険適用内で歯を引っ張る矯正を行う場合は、子どもの医療費助成制度で矯正にかかる費用がかなり安くなるケースも。

子どもの医療費助成制度については、地域によって内容が異なるため、埋伏歯の治療を行う際はお住まいの自治体に確認することをおすすめします。

Q.歯を引っ張る矯正は医療保険の給付対象になりますか?

歯を引っ張る矯正は基本的に医療保険の給付対象にはなりません。

以前は歯科治療に対して給付金が支払われる医療保険もありましたが、最近ではどの保険会社でもそのようなプランは取り扱わなくなってきています。

しかし、保険会社によっては現在も給付対象となる場合があるため、開窓手術をする場合は保険会社に確認してみるとよいでしょう。

歯を引っ張る矯正が必要か歯科クリニックに相談しよう

歯を引っ張る矯正はすべての埋伏歯が対象になるわけではありません。埋伏歯が親知らずだった場合は、歯を引っ張る矯正ではなく、抜歯が必要となることもあります。

そのため、歯を引っ張る矯正を行う際は、事前に歯科クリニックで引っ張る歯(埋伏歯)がどの位置にあるか、どのように生えているのかなどを確認してもらうことが必要です。

マウスピース矯正 Oh my teethでは、LINEで歯並びの悩みに関する相談ができます。気になる部分の写真を見ながらの相談も可能なので、精密検査へ行く前に歯科医師の意見をある程度聞いておきたいという方におすすめです。

「歯の本数が少ない気がする」「もしかしたら歯茎やあごの骨に生えてきていない歯があるのではないか」と感じる人は、ぜひお気軽にご相談ください。

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