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歯科矯正
最終更新日:2024年4月28日

歯列矯正は保険適用される?適用症例や費用を抑える方法を紹介

「歯列矯正に興味があるけど治療費が高額で手が出せない」「歯の治療なのに健康保険が適用されないって本当?」

歯列矯正の費用は決して安くはないため、健康保険が適用できないか気になっている方も多いのでは?

結論から言うと、歯列矯正は基本的に保険適用外で全額自己負担となります

なぜなら、健康保険は病気やケガの治療費の負担を軽減するための仕組みだからです。歯列矯正は、どちらにも当てはまらない「歯並びの見た目を整える」審美目的のためです。

ただし、一部の症例では、医師により治療が必要な疾病であると診断され、歯列矯正が保険適用になるケースがあります。そこで本記事では、保険適用になる症例や受診の流れなどを紹介します。

また、全額自己負担の場合でも矯正費用を抑える方法もあるので、あわせてチェックしてみてくださいね。

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歯科医師

西尾万樹

東京表参道矯正歯科 院長。北海道医療大学歯学部卒業。2018年歯科医師免許取得。旭川医科大学病院口腔外科にて研修後、矯正歯科勤務。2020年コスメコンシェルジュ取得。

歯列矯正は保険適用される?

歯列矯正は基本的には保険適用の対象外です。
一部の、厚生労働省が定めた特定の条件を満たした症例であれば、保険適用の対象になることもありますが、その他のほとんどの例は保険適用になりません。

歯列矯正が保険適用外なのはなぜ?

歯列矯正が保険適用外になる理由は、矯正治療は「歯並びの見た目を整える」という審美目的だからです。健康保険は、病気やケガの治療の負担を軽減するための仕組みのため、審美目的の矯正治療は保険適用外となります。

そのため、矯正治療にかかるカウンセリング料・検査料・診断料・調整料などがすべて自己負担となり、費用が高額になります。

歯列矯正の費用目安については、後ほど改めて紹介します。

歯列矯正が保険適用になる条件

カウンセリングをする医師

一部の症例では、歯列矯正が保険適用になることもあります。歯列矯正が保険適用されるのは、「対象の疾患であること」と、「国に認可された医療機関で治療を受けること」の2つにあてはまっていることが条件です。

対象の疾患である

歯列矯正が保険適用になる例は、日本矯正歯科学会のホームページで提示されています。

①「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療

②前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療

③顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・手術後の矯正歯科治療

なお、これら保険適用される矯正歯科治療を行える医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみになります。

出典元: 公益社団法人 日本矯正歯科学会

「別に厚生労働大臣が定める疾患」とは

先述した「別に厚生労働大臣が定める疾患」は、以下です。

唇顎口蓋裂
ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
鎖骨頭蓋骨異形成
トリーチャ・コリンズ症候群
ピエール・ロバン症候群
ダウン症候群
ラッセル・シルバー症候群
ターナー症候群
ベックウィズ・ウイーデマン症候群
顔面半側萎縮症
先天性ミオパチー
筋ジストロフィー
脊髄性筋委縮症
顔面半側肥大症
エリス・ヴァンクレベルド症候群
軟骨形成不全症
外胚葉異形成症
神経線維腫症
基底細胞母斑症候群
ヌーナン症候群
マルファン症候群
プラダー・ウィリー症候群
顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)
大理石骨病
色素失調症
口腔・顔面・指趾症候群
メビウス症候群
歌舞伎症候群
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
ウイリアムズ症候群
ビンダー症候群
スティックラー症候群
小舌症
頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
骨形成不全症
フリーマン・シェルドン症候群
ルビンスタイン・ティビ症候群
染色体欠失症候群
ラーセン症候群
濃化異骨症
6歯以上の先天性部分無歯症
CHARGE症候群
マーシャル症候群
成長ホルモン分泌不全性低身長症
ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)
リング18症候群
リンパ管腫
全前脳胞症
クラインフェルター症候群
偽性低アルドステロン症
ソトス症候群
グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
線維性骨異形成症
スタージ・ウェーバ症候群
ケルビズム
偽性副甲状腺機能低下症
Ekman-Westborg-Julin症候群
常染色体重複症候群
巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)
毛 ・鼻・指節症候群(Tricho Rhino Phalangeal症候群)
その他顎・口腔の先天異常

出典元: 公益社団法人 日本矯正歯科学会

注意点:矯正器具が限られる

保険適用で歯列矯正を行う場合、顎の手術を含む治療方法や矯正器具が限られています。そのため、病的な診断があっても保険適用外の矯正器具を使用した場合、保険適用外になることがあります。

※マウスピース矯正は保険適用外です。

注意点:診断だけでは保険適用にならない

歯列矯正が保険適用になるには、医師による病的な診断が必要ですが、診断だけでは保険適用にはなりません。たとえば顎変形症と診断された場合、顎の手術を含む治療方法が保険適用の条件になります。

国に認可された医療機関で治療を受ける

歯列矯正が保険適用になるには、国に認可された医療機関での治療が対象です。国に認可された医療機関は、以下の方法で検索できます。(参照: 矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは | 公益社団法人 日本矯正歯科学会)

  • 地方厚生(支)局の一覧ページから、お探しのエリアの厚生(支)局のホームページへアクセス

  • サイト内検索などで、施設基準届出受理医療機関名簿へアクセス

  • お探しのエリアの「歯科(PDF)」へアクセス

  • 「矯診」あるいは「顎診」と記載のある指定医療機関を探す

「矯診」…下記①、②が保険適応される医療機関
「顎診」…下記③が保険適応される医療機関

①「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療

②前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療

③顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・手術後の矯正歯科治療

出典元: 公益社団法人 日本矯正歯科学会

上記の医療機関を探す方法(関東エリアの例)

国に認可された医療機関(保険適用の歯科矯正治療を受けられる歯科医院)の探し方(関東エリア)
国に認可された医療機関(保険適用の歯科矯正治療を受けられる歯科医院)の探し方(関東エリア)

上記の方法のほか、インターネット検索で検索窓に「指定自立支援医療機関 矯正」およびお探しのエリアを入力して検索することもできます。

保険適用で歯列矯正を行う場合の流れ

歯列矯正を保険適用で受ける流れは、以下の通りです。

  • 国に認可された医療機関を探す

  • カウンセリング

  • 検査・診断

  • 術前矯正 通院期間:半年~1年半程度

  • 手術

  • 入院 期間:2週間程度

  • 術後矯正 通院期間:半年~1年半程度

  • 保定期間

上記のように、まずは国に認可された医療機関を探し、検査を受ける必要があります。手術が必要なため、通常の歯列矯正よりも期間が長くかかる傾向にあります。

たとえば、上あごよりも下あごが出ているいわゆる「受け口」「しゃくれ」と呼ばれる状態の中でも、骨格的な問題があるものは「顎変形症」と診断されることがあります。顎変形症と診断されると、矯正治療と外科手術に保険が適用されます。

自分が保険適用の症例か判断するのは難しいため、歯科医院で相談しましょう。

保険適用外になった場合の矯正費用

保険適用外で全額自己負担になった場合の歯列矯正の費用目安は、以下の通りです。

大人の歯の矯正の種類別の値段
  • 表側矯正:30〜130万円程度

  • 裏側矯正:40~170万円程度

  • ハーフリンガル矯正:35~150万円程度

  • マウスピース矯正:10~100万円程度

上記のほか、以下のような費用もかかります。

歯列矯正の流れ

内訳

費用目安

モデルケース(合計:98万円)

プレ矯正期間

カウンセリング

精密検査・診察

虫歯・歯周病治療

抜歯

無料~5,000円

10,000~65,000円

1,500~10,000円/回

5,000~15,000円/本

カウンセリング:無料
精密検査・診察:30,000円
虫歯・歯周病治療:なし
抜歯:4本(5,000円/本)

合計50,000円

矯正期間

矯正費用

調整料

10万~170万円

3,000~10,000円/回

矯正装置料:75万円
調整料:5,000円/回
矯正期間:2年間
矯正中の通院頻度:1ヶ月に1回

合計87万円

保定期間

保定装置料

観察料

10,000~60,000円

3,000~5,000円/回

保定装置料:20,000円
観察料:5,000円/回
保定期間:2年間
保定期間中の通院頻度:3ヶ月に1回

合計60,000円

費用の設定は、歯科医院によって異なるため、あくまでも目安として参考にしてください。

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歯列矯正費用の負担を軽くする方法

「保険適用外の費用の負担を軽くする方法はある?」
「顎変形症と診断されたけど手術はしたくない」

こうお考えの方もいるかもしれません。歯列矯正が保険適用になる症例は少ないですし、症例に当てはまったとしても決められた治療方法や矯正器具以外で治療したい場合は、保険適用外となります。

そのため、保険適用外の矯正費用は高額になりがちですが、ここでは歯列矯正費用の負担を軽くする方法を紹介します。

医療費控除

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が一定の額を超えた場合、受けられる所得控除です。自分だけでなく、配偶者や家族も対象となるため、領収書は大切に保管しておきましょう。

マウスピース矯正でも噛み合わせの治療など、医師が認めたものであれば、診断書をもらって医療費控除が受けられる場合があります。

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デンタルローンを利用する

デンタルローンとは医療ローンの一つで、歯科治療の費用を患者の代わりに信販会社が建て替え、歯科医院に支払うローン契約です。安定した収入があれば利用でき、未成年や学生でも親名義で申請が可能です。

メリットは金利が低い点で、デメリットは審査がやや厳しい点です。

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また、以下の記事では「矯正を受けたいけどお金がない」と言う人に向けて、費用を抑える方法を詳しく紹介しています。あわせて参考にしてくださいね。

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歯列矯正を迷っているならまずは相談を

歯科矯正は基本的に保険適用外ですが、噛み合わせの治療のために必要という医師の診断書があれば医療費控除を受けられます。全額自己負担となった場合でもデンタルローンで毎月少しずつ払うことも可能です。

どれくらいの費用がかかるかは歯並びによるので、まずは矯正相談に行ってみて見積もりを出してもらうのがおすすめです。

マウスピース矯正 Oh my teethの無料診断では、歯科医師に直接歯並びのお悩みや費用に関するご相談をしていただけます。お気軽にお申し込みください。

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