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マウスピース矯正
最終更新日:2024年4月30日

インプラントとマウスピース矯正はどっちが先?知っておきたい治療の注意点を解説

天秤

本記事では、インプラントとマウスピース矯正どっちを先にしたらいいかを解説。インプラントを入れるタイミングや両方行う際の注意点も紹介します。

牧野智優先生
歯科医師

牧野 智優

日本大学歯学部卒業後、神奈川県医療法人にて分院長に就任し、JIADS歯周病コースにて研修を積む。2008年にまきの歯科クリニックを開設し、インプラント治療を中心に、予防歯科、小児歯科、入れ歯・義歯治療など幅広い診療を提供。2019年にはiGOアライナー矯正認定コースを終了。日本口腔インプラント学会国際口腔インプラント学会に所属。

「インプラントとマウスピース矯正どっちを先にしたらいい?」
このような悩みを抱えていませんか?


失った歯を補うインプラント治療と歯並びを整えるマウスピース矯正。これらを組み合わせることは可能ですが、治療の順序には注意しなければなりません。

順序を間違ってしまうと、理想とする歯並びと噛み合わせが得られない可能性があります。

本記事ではインプラントとマウスピース矯正どっちを先に進めるべきか、両方行う際の注意点を解説します。

また、すでにインプラントが入っている場合のマウスピース矯正は可能なのかについても解説していますので、これから治療を検討している方もぜひ参考にしてください。

インプラントとマウスピース矯正の基礎知識

インプラント

失った歯を取り戻したり、歯並びを整えたりするためには、インプラント治療やマウスピース矯正など複数の選択肢があります。

これらの治療は多くのクリニックで提供されていますが、どちらも高い専門性が求められます。

ここでは、「耳にしたことはあるけど、どちらもよく知らない」という方に向けて、インプラントとマウスピース矯正の基礎知識について解説します。

インプラントは失った歯を補うための治療方法

インプラントとは、虫歯や歯周病、事故などで失った歯を補う治療方法です。

失ってしまった歯があった場所に「人工歯根」を埋め込み、その上に被せ物を装着して、見た目と噛む機能を回復させます。

インプラントはあごの骨に直接固定されるため、噛む力が天然歯に近い感覚で伝わり、食事の違和感が少ないのがメリットです。

また、被せ物(クラウン)にはセラミックやジルコニアなどの種類があり、天然歯のような見た目も再現できます。

ただ、インプラント治療は、あごの骨の量が一定程度ないと治療ができません。また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のある方は適さない場合もあります。

ちなみに、歯並びの審美性改善のために「インプラント矯正」が行われることがありますが、インプラント治療とは別物です。

インプラント矯正は歯茎に小さなネジを埋め込んで、そこを固定源として歯を動かす矯正手法の一種です。混同しないように注意しましょう。

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マウスピース矯正は歯並びと噛み合わせを整える治療方法

マウスピース矯正とは、矯正治療専用のマウスピースを1日20時間以上装着することで歯並びと噛み合わせを整える治療方法です。

1~2週間ごとに新しいマウスピースに交換し、小さな力で歯を動かすため矯正中の痛みが少ないといわれています。

マウスピース矯正の最大のメリットは、矯正器具が目立ちにくい点です。薄くて透明なマウスピースを使用するため、装着していても周囲にほとんど気づかれません。

また、マウスピースは自分で簡単に取り外しができるので、矯正前と同じように食事や歯磨きができます。

一方で、固定式のワイヤー矯正と異なり、マウスピースの装着時間や交換時期など自己管理が求められるのはデメリット。

また、治せる歯並びが限られており、骨格に起因する歯並びの乱れや重度の症例には対応できないケースがあります。

自分の歯並びがマウスピース矯正で治せるかどうかは、クリニックでの精密検査が必要です。

インプラントとマウスピース矯正どっちが先?

疑問に思う女性

結論からいうと、基本的にはマウスピース矯正を先に行います。インプラントには「歯根膜」(しこんまく)と呼ばれる組織がなく、骨と直接結合しているため、力を加えても歯は動きません。

インプラント治療をしたのちにマウスピース矯正をする場合、治療途中で歯を動かす必要が生じることがあります。しかし、インプラントはあごの骨に固定されているため、歯を動かすことができません。そのような理由から、通常はマウスピース矯正を先に行います。

ただ、マウスピース矯正は口腔スキャナーを用いて、歯の動きをシミュレーションできるため、治療のゴールを事前に設定可能です。

そのため、インプラントを入れる位置を先に決定し、マウスピース矯正と並行してインプラント治療を行うこともあります。それにより治療期間全体の短縮につながります。

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インプラントを入れるタイミングは治療方針によって異なる

インプラントイメージ

マウスピース矯正とインプラント治療を組み合わせる場合は、矯正治療とインプラント治療を専門とするそれぞれの歯科医師が連携しながら治療計画を立てます。

歯並びの状態、インプラントを入れる本数、被せ物を埋める場所などは当然、患者さん一人ひとり違うもの。

そのため、「インプラントと矯正のどっちを先に行うか」「インプラントを入れるタイミング」も歯科医師の判断によって異なります。

インプラントを入れるタイミングの例
  • マウスピース矯正で歯並びがある程度整ってから(同時進行のケースもある)

  • 保定期間に入ってから

  • 保定期間を含むマウスピース矯正が完全に完了してから

インプラントは、外科手術が必要になるため、術後の痛みや腫れが生じる可能性があります。仕事や学業への影響を少なくするためにも、インプラントを入れるタイミングについて歯科医師と十分な相談を重ねたうえで決定しましょう。

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すでにインプラントが入っている場合はマウスピース矯正できる?

マウスピース矯正

すでにインプラントが入っている状態でも、マウスピース矯正を行うことは可能です。インプラントが入っている位置によっては、固定源として活用できるケースもあります。

ただし、インプラント自体は動かせないため、入っている位置や本数、インプラントブリッジなどの状況によってはマウスピース矯正ができないケースもあります。

インプラントブリッジとは

歯を3本以上連続して失った場合、両隣にインプラントを入れて土台にし、その上に3つの歯がつながった一体型の被せ物を装着する方法。

なお、インプラントには、被せ物をセメントで固定する「セメント固定」と、小さなネジで固定する「スクリュー固定」の2種類あります。

基本的にセメント固定のインプラントは、マウスピース矯正で位置や見た目を変えることはほとんどできません。ただ、スクリュー固定の場合は歯肉の下で形態を変更できるため、多少であれば角度や大きさなど修正可能です。

インプラントとマウスピース矯正両方する場合の注意点

注意マークの画像

インプラントとマウスピース矯正を組み合わせた治療は、歯並びの改善と噛み合わせの機能向上を目指すうえで有効な手段です。

ただ、決して簡単な治療ではないため、インプラントとマウスピース矯正の併用を検討している方は以下の点に注意しましょう。

インプラントとマウスピース矯正両方を希望する際の注意点
  • 同じクリニックで治療を受ける

  • 治療期間が長くなる可能性がある

  • インプラント以外の選択肢も検討する

  • 歯がない期間が生じる可能性がある

  • 費用が高額になる

同じクリニックで治療を受ける

インプラントとマウスピース矯正を異なるクリニックで行うと、歯科医師間で連携が取れず、治療がうまくいかない可能性があります。

そのため、インプラント治療とマウスピース矯正の両方を提供し、それぞれ専門の歯科医師が在籍しているクリニックで治療を受けるのが望ましいです。

もし、どうしても別々のクリニックで治療を受けないといけない場合は、それぞれのクリニックに「インプラント治療とマウスピース矯正をしたい」ということをしっかりと伝えることが大切です。

治療期間が長くなる可能性がある

インプラントとマウスピース矯正を組み合わせた治療は、インプラントを入れるタイミングにもよりますが、治療期間が長引くことがあります。

マウスピース矯正の治療期間は、治す範囲によって異なります。目安は以下の通りです。

全体矯正(歯並び全体の改善を目指す)

1~3年程度

部分矯正(前歯周辺のみの改善を目指す)

2ヶ月~1年程度

また、矯正後は「保定装置(リテーナー)」をつけて動かした歯を固定する保定期間に移行します。保定期間は「矯正装置をつけていた期間+半年」が理想です。

一方、インプラントの目安期間は以下の通りです。

上あご

6ヶ月~1年

下あご

3~6ヶ月

インプラント治療は、インプラントを入れたあと、あごの骨と結合するまで時間が必要です。骨造成(骨の量が不足している際に行われる処置)など行った場合は、治療期間はより長くなります。

マウスピース矯正を先に行い、インプラントを入れる場合は、トータルで数年かかることも。治療を開始する前に、想定される治療期間なども鑑みて治療計画を立てることが大切です。

インプラント以外の選択肢も検討する

マウスピース矯正とインプラントを選択する場合、期間だけでなく治療費も高額になります。「費用の負担を抑えたい」「長期間の通院は難しい」という方は、インプラント以外の選択肢を検討するのも一つの方法です。

歯を失ってしまった場合の治療方法には、ブリッジや入れ歯といった対処法もあります。

どの方法を採用するにしても自分の希望や考え方を担当医師に伝え、相談しながら自分に合った治療を行うことが大切です。

歯がない期間が生じる可能性がある

矯正治療では、歯を並べるスペースを確保するために抜歯が必要になることがあります。また、すでに歯を失っている場合、インプラントを入れるまでの間は一時的に歯がない状態になることもあるでしょう。

もちろん、仮歯で一時的に見た目を改善することは可能です。ただ、マウスピースの着脱時に仮歯が取れてしまうことも多く、両者の相性はあまりよくありません。

治療中の見た目が気になる場合は、歯科医師とよく相談し対処法や改善策を検討しましょう。

費用が高額になる

インプラントとマウスピース矯正はどちらも基本的に保険が適用されず、自由診療になります。以下のように、決して安くない治療費がかかることは理解しておきましょう。

マウスピース矯正部分矯正

部分矯正:10万~40万

全体矯正:60万~100万

インプラント(1本あたり)

30万~40万円

マウスピース矯正では装置の費用以外にも、検査料・調整料・保定装置料・観察料などがかかることがあります。

また、インプラント治療では被せ物の素材によっても費用に幅があり、検査料も別途かかります(目安は15,000~30,000円)。

さらに、「GBR(骨造成手術)」や「サイナスリフト」など、骨の量を増やす処置をした場合は追加で3万~10万円かかることも。

治療前にCT撮影を行い施術を行う前に、費用感を提示してくれるクリニックもあります。経済的な不安がある場合は、費用についてもしっかりと説明してくれる歯科医院を選ぶといいでしょう。

インプラントとマウスピース矯正両方を検討している場合は歯科医師とよく相談しよう

インプラントとマウスピース矯正を併用した治療は、失った歯の本数や場所、歯並びの状態をしっかりと把握し、治療計画を立てる必要があります。

基本的にマウスピース矯正治療を先に行うのが一般的ですが、ケースによってはインプラント治療を並行して進められる可能性もあります。

なお、インプラントとマウスピース矯正のどっちを先にやるか知りたい場合は、まずは歯科医院でカウンセリングと精密検査を受けましょう。

治療の手順・必要な期間・見込まれる費用などを明確にし、納得のいく治療計画を立ててもらうことが重要です。

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